1 成長と気づき

なぎほのは成長していった。お互い全く別の世界に住んでいたふたりがお互いをだんだんと知り、プリキュアとしての覚悟を知り、他者を知り、そうやって世界と自分のかけがえの無さを知るに至った。それに対して咲舞はすでにそこにあるものに気づいてゆく。彼女たちは小さいころにとねりこの木の下で出会っており、やがてプリキュアになることはそのころからの宿命であるかのように描かれている。ということはほぼプリでも何度か書いている。
最近のS☆Sでもそれは一貫している。というか開始当初よりも明確になっているように思われる。たとえば今週の第18話において、舞は薫を通して思ったことをそのまま伝えることの重要性に気が付く。咲はみのりが手伝いをできないと決め付けていたこと(が間違いだった)に気が付く。第17話では、母の埴輪が母にとって本当に大切だったことに舞は気がつく。第16話では、健太が「がんばっている咲を見て気が付いた」。第15話で咲にお母さんが語った言葉は「覚えてる? 力いっぱい一生懸命、そして楽しく」であり、咲はそれを思い出す。

過激さん

ちかごろid:dokoiko:20050605にて過激さんとひっそりやり取りしている。最初のコメントをちょうど一年後の2006年6月5日にいただいたので、なんかすごい釣りなのかと思った。しかし実はとてもまともな(というと過激さんに失礼だけれど)方であるようだ。それで、過激さんに聞きたいことがある。もしお気に召すなら教えていただけるとうれしいです。ってか別に、すごく期待してるとか…… そんなの無いんだからねっ!!

  • 「ポポ畜への憎しみと怒り、そして一種の正義感からきていると信じていただきたい」

ポルンの何について憎み、怒っているのですか。また一種の正義感とは、どのような状況に対するどんな正義感なのでしょうか。

  • 「どれだけポポ畜の存在が有害で不毛を極めることであるか」

ポルンの存在が何にとってどのように有害で不毛を極めることなのでしょうか。

言うまでも無く上記の質問は純粋に質問であり、ポルンに対して憎しみや怒りを持つべきではないとか、正義感なんてイラネとかいう反語的修辞ではありません。またポルンが有害ではなく不毛でもないという意味でもありません。たとえばポルンがわがままで人の言うことを聞かないにもかかわらず、保護者であるメポミポやなぎほのひかりがそれを(そのたびごとに)注意しないことで、番組を見ている小さいお友達がポルンのように振舞ってもいいのだという描写になっている…… そういうことでしょうか。
お答えを期待する前に、まず僕の立場を明らかにしておいたほうが良いかもしれません。僕はポルンを許容します。なぎさになつく無印第32話まではいまいち受け入れにくかったです。しかしそれ以降、ポルンの行動は小学校入学前ぐらいまでの幼児の行動にかなり近いと僕には感じられます。気分屋で周囲の状況が読めないのはそのとおりで、しかしなぎ(ほの)ひかりが大好きで彼女たちのため(ポルンなりに)がんばるポルンは、僕には好ましく見えます。

 5 満薫に手渡されたもの

彼女たちが変質をはじめたのは、咲舞の影響であることはまず間違いないだろう。しかし彼女たちはまだ自分たちが変質をはじめたことを認識していない。というより認識を拒否しているのだろう。休憩時間の受け答えで言葉をなくしたのは、それ以上自身が変質することを無意識で拒否したのだろう。
S☆S第18話は月夜の満薫に始まり、実質また月夜の満薫で終わる。エピソードは円環を描いているが、最終的に彼女たちの手にはパンが残った。しかも彼女たちがパンを手に取ったままエピソードは終わる。満薫はパンを食べるでもなく、捨てるでもなかった。
もちろん満薫が手にしているパンは象徴であり、それは咲舞(とみのり)が彼女たちに手渡したものである。満薫はそれを忘れるわけにはいかず、捨てることもできず、だが受け入れることもできない。

 4 好奇心と素直さ〜咲舞との理解可能性

満薫が転校生としてこの世界に乗り込んできたのは、敵を知るためである。しかしそれもやはりS☆S第17話月夜のシーンまでとそれ以降ではちょっと異なるように思える。あの月夜のシーン以降、満薫は好奇心があり素直であるように描かれ方が変化しているようだ。
月夜以前の満薫は、咲舞を知ることでプリキュアの強さを分析していた。しかし月夜以降(というかそれはまだ第18話しかないわけだが)満薫はプリキュアたちを分析しようとしていない。それどころか満がエプロンを着けてパンを売ったり、薫がみのりに「自分ができることを自分で考えてやればいい」と伝えることは、プリキュアを分析する手段にもならない。
「何で私が……」と言いながらも、満薫はこの世界になじみ始めている。満は言われるままエプロンを着けてドアを開けてあいさつをする。薫はみのりに自分の信じるところを語り、みのりの成功を何の疑問をはさまずに認める。休憩時間には「くだらない」と言わず咲舞と受け答えをしている。おそらく満薫は咲舞とおなじぐらいじつは素直であり、その辺から咲舞との理解可能性が出てきた。

 3 闇の中で

満薫は閉じている。他者に対して閉じている。他者の視線が彼女たちの自我を規定している。それゆえ他者がいなければ彼女たちの自我は安定しない。だからこそ彼女たちは他者のいない闇に立つと、彼女たちの存在について考え出す。
構図としてはキリヤの場合と似ている。しかし満薫の疑問はキリヤの悩みより根源的である。キリヤの場合は生きるべきか死ぬべきかという選択であった。しかし満薫の疑問は「我々は何のために存在しているのか」「我々は何であるか」であると思われる。また分身たちにも似ているが、分身たちにとってすでに答えは出ていた。分身たちはジャアクキング様を乗り越えて生きようとしていた。

 2 咲舞の裏としての満薫

さて話は満薫である。満薫と咲舞とを対として理解するとき、まず挙げられるのは対照性であろう。満薫は自分たちだけの世界に生きている。薫が特に「くだらない」と言うので満薫が無関心のように見えるが、彼女たちの本質はそこではない。「指図は受けない」と仁美やドロドロンさんに怒らざるを得なかった満薫は、彼女たちのしたいことだけをしたいのであり、無関心というよりも閉じていると言うのが適切だろう。これは、我を忘れていなければ咲舞が常に相手のことを考える性質の裏であると見てよいだろう。
満薫が登場したS☆S第14話から第17話前半までは、咲舞の裏としてこの性質が強調されていた。しかし第17話後半には様相が変わる。