5 満薫に手渡されたもの

彼女たちが変質をはじめたのは、咲舞の影響であることはまず間違いないだろう。しかし彼女たちはまだ自分たちが変質をはじめたことを認識していない。というより認識を拒否しているのだろう。休憩時間の受け答えで言葉をなくしたのは、それ以上自身が変質することを無意識で拒否したのだろう。
S☆S第18話は月夜の満薫に始まり、実質また月夜の満薫で終わる。エピソードは円環を描いているが、最終的に彼女たちの手にはパンが残った。しかも彼女たちがパンを手に取ったままエピソードは終わる。満薫はパンを食べるでもなく、捨てるでもなかった。
もちろん満薫が手にしているパンは象徴であり、それは咲舞(とみのり)が彼女たちに手渡したものである。満薫はそれを忘れるわけにはいかず、捨てることもできず、だが受け入れることもできない。