1 反復のリズム

ドラえもんクレヨンしんちゃんの世界では時間が流れない。毎週時間はリセットされ、登場人物たちは前回までのお話をすっかり忘れてしまう。「ふたりはプリキュア」は敵を一人一人倒してゆくお話である。物語の中で時間が流れないと困る。しかしそれはお話の主題ではなく前提であり、ほんとうの主題はなぎさとほのかとの友情進展プラス、メップルとミップルとポルンとの絆を結んでゆく過程にある。もともとは知らないもの同士がだんだんと関係を厚くしてゆくお話だから、それこそ時間が流れなければどうしようもない。
ということでなぎさとほのかを取り巻く時間はしっかりと流れてゆくのだが、「ふたりはプリキュア」では他の登場人物たちの時間もしっかりと流れてゆく。
今回は京子と夏子が偽プリキュアとしての過去を背負って再登場した。シリーズとしては超一発ネタの偽プリキュアという過去を背負わずに再登場するわけにはいかないだろうが、一発ネタをもう一度やるのはどうしようもない。しかし彼女たちはしっかりと偽プリキュアの過去を背負っていた。文化祭で衣装担当になったのだが、彼女たちはもともとプリキュアを少し見ただけで偽プリキュアの偽衣装をそれなりに作ってしまう洋裁好きだったらしい。
ふたりで閉じた世界を作っている描写も偽プリキュア回から引き続き描かれており、さらに彼女たちが偽プリキュアであることをなぎさとほのかがちゃんと覚えている描写も今回なされていた。さらに京子と夏子が(偽プリキュアネタを突っ込んだ)ほのかとある程度打ち解けているような態度を取っており、ここでも偽プリキュア回の出来事を織り込んでお話が構成されている。
さらに言えば、投票結果を黒板に正の字で確認しながら物事を決めるという方法は、第二話にクラス委員を決めるときにも採用されている方法だ。おそらく何か決め事をするときには毎回そうやって投票が行われているということだ。もう半年以上前の記憶が視聴者の気持ちの中にうごめくことで、ずっと前からなぎさとほのかは視聴者のそばにいるという気持ちになる。
このシーンではうしろで流れる音楽も同じ、なぎさが上の空で戦いを回想している情況も同じ、投票結果が出るとなぎさが我に返るところも同じで、定型化された演出がしっかりと効果をだしている。
また、文化祭当日にはパラソルで彩られた女子部の中庭を二階の教室から眺めたシーンが出てきたのだが、これは第8話でなぎさがほのかと藤Pの会話を見てしまうシーンと同じ構図だ。使いまわしといえば使いまわしなのだが、このような使いまわしは視聴者に懐かしさを感じさせる非常に有効な仕掛けとなっており、学園ではいつもの日常がたんたんと続いているのだということが示されている。