物語の様式化

dokoikoさんが指摘されているように、特に最近のプリキュアは物語が高度に構造化されているので、実は安定して見られる作品になってますよね。ちゃんと手順を踏んでいるというか、今回の2度救出されるあたりとか儀式的な点をちゃんと押さえてる。
id:dokoiko:20050417、itamasuさんコメントより)

これはitamasuさんの昨日コメント上記再掲部分を読んで意を強くしたので書きます。マックスハートについて僕は16日など「その辺がマックスハートにおけるインパクトの弱さなのかなあと思う」と書いたりしています。僕は個人的にウェルメイドな物語より、荒削りでも何か強烈なエネルギーが出てしまっている物語のほうが好きなのでそう書いてしまったのだろうと思う。
ただしマックスハートを物語として眺めてみると、itamasuさんが書いているように高度な様式化を行っていることが分かる。

光と闇は表裏一体

無印では第一回ジャアクキング様決戦でようやく「光と闇は表裏一体」という言葉が出てきたりしたが、結局それは言葉で説明されただけで物語にビルトインされることは無かった。無印が終っても結局、光と闇がどのように表裏一体なのかと言うことは分からなかった。
ところがマックスハート開始時点で、光のクイーンとジャアクキング様はともに崩壊していなくなった。そして両者同時に代替わりプロセスが始まり、光=シャイニールミナス、闇=洋館の少年という何も知らない子供に生まれ変わった。
そしてまた、ルミナスと少年はどちらも徐々にペースを合わせるように成長している。

12のハーティエル

無印での目的は、ドツクゾーンに奪われた7つの石を取り戻すことだった。ただしなぜ石が7つあるのか、またそれぞれ色の違う石がどのように違っているのかということは最後まで分からなかった。おそらく魔人とメポミポに石を割り振り、7という数字がマジックナンバーだからそうなったということだろうと思う。そうでなければ、多分それぞれの石に名前がついていて、それぞれ何を象徴しているのかぐらいは設定が出てくると思う。
マックスハートでは、そもそもクイーンが光と心と意志(ハーティエル)に分解するという設定があること自体がすでに無印とは異なっており、構造化されていることがわかる。しかもクイーンの意志であるハーティエルは12人いることになっている。意志=石だとしたら、無印での7つの石設定を引き継ぐ形を取らねばならず、そもそもハーティエルは7人で無ければならないはずだ。7つの石という設定を無かったもののように意志であるハーティエルを12人にしたことは、ちゃんと考えて設定し直したのだろうと推測する。

ハーティエルの出現時期

これは以前ほぼプリで書いた。ハーティエルは無作為に出現するのではない。クイーンの命である九条ひかりが、それぞれのハーティエルに対応する意志を身に付けたときに出現するようだ。
そういう設定にするということは、一年続く物語の中で九条ひかりをいつの時点でどのように成長させるのかというシリーズ構成が(マックスハート企画時点で)作られていると思われる。もしかしたらできていないかもしれないが、常に一年の中に位置付ける形で一話一話を作っていかなければならない。

光の園住人の不可視化

無印ではメポミポとポルンは人目を避けていた。マックスハート開始時にも、長老と番人が理恵ママの目を避けてかくれんぼをしていたのだった。しかしMH第11話では、メポミポとポルン、シークンとパションとハーモニンは人目も避けず堂々と姿を見せてしゃべっている。またその側にいるほのかとひかりも、それをたしなめようともしていない。
これはもう「これはお話なんだから、光の園の住人たちをいちいち隠すようなことはしない」というお約束になっているのだろう。
無印ではいろいろなところでリアリティを追求する路線になっていた。肉体的な痛みを感じるようなアクション描写であったり、現在のいわゆるアニメ的な人体描写ではない作画であったり、いきなりプリキュアにされてしまったなぎさとほのかの戸惑いであったりというところだ。そのひとつに、メポミポ(とポルン)は人前に姿を現してはいけないという約束があった。
ところがその約束は九条ひかりお使いのあたりからだんだんとへんしつしており、今回MH第11話ではもはやそのお約束は、どうでもいいものになっている。これは物語の様式化が進んだ結果、プリキュア常世界(虹の園)のリアリティとわれわれが住むこの世界のリアリティから離れていったということだろう。ぶっちゃけ「まあ、いろいろ言ってもお話なんだからそこんとこはまあいいじゃない」ということだ。
ということで「ふたりはプリキュア」は、マックスハートになってからファンタジーになったということだ*1

*1:野口悠紀雄が以前、週間東洋経済に2回にわたってナウシカに関する考察を書いていて、そこにファンタジーの定義があった。詳しいことは忘れた。押入の書類保管ダンボールのどれかに残してあるはずだが、めんどくさいので探さない