3 キュアアクション

あの緊張感はきれいな顔を描いていたら表現できないものだと思います。僕はあえてあのように描いていると思います。それよりも、絵を描いている人(たち)が思わずあのように描いてしまうのだと思いますし、もっと言えばああいう表情としてなぎさとほのかが動いてしまっているのだと思います。ルミナスにしても、戦闘中に彼女が感じていただろう初めて味わうリアルな恐怖も凄く良く描けていて、本気で目をそらしたいぐらいの感情を感じました。
id:dokoiko:20050417、dokoikoのコメントより)

と僕は評価している。今回の戦闘、僕は気に入っている。でもそうではない人もいるようで、もうちょっとこの辺を細かく考えてみようと思う。

感情表現

今回鉄塔ザケンナーに立ち向かうルミナスの表情をじっと観察していて、ずっと以前に何かどこかで見たことがあるなあと思った。1/2倍速で見てみた。それでもかなりすばやい動きをしているのでびっくりしたのだがそれはおいておく。あの恐怖にゆがんだ表情をいつ見たのかと記憶の棚をいろいろさがしてみたところ、見つけた。初代ガンダムだった。第1話「ガンダム大地に立つ」で、ガンダムに始めて乗ったアムロ・レイが、ザクと真正面で対峙した時の表情だ。
すげー、よく描いているよ。ルミナスへの変身時点ではなぎさの試合のため、自分ひとりで何とかしなきゃいけないというルミナスの意志。でも鉄塔ザケンナーが電撃準備に入るときには、今までずっと守ってくれていたブラックとホワイトが不在で自分がひとりでこんな巨大な敵と直接戦わなくてはならないという恐怖。そしてビブリスに「あの二人を呼んでこれば?」と凄まれた時のくじけそうな(だが何とかしなきゃいけないと思う)揺れ動く心。
これを全部、セリフではなく叫びと絵で表現したのは、無印からの大きな飛翔だと思う。無印時代であれば、おそらくこの緊迫感はセリフで表現されただろうと思う。例えばイルクーボの強さをメポミポがセリフだけで説明したように、ポルンが恐れおののくセリフを口にするとか。また例えばルミナスが思わず弱音を説明するとか。
ところが何度も言うが、今回はルミナスはしゃべらない。しゃべることすらできず、タダ叫ぶしかないという極限の緊張感だったわけだ。それをちゃんとしゃべらせないで表現したのは大したものだ。僕が言うのも何だが、成長したな。

アクション演出

今回のアクションはかなりのがんばりを見せている。カットは引き−中間−アップを繰り返していてテンポを生み出している。アップが来るたびにルミナスの気持ちがしっかりと設定されており、単に顔のアップを出しているのではない。またザケンナーは基本的に見上げる構図=ルミナスが見ているような角度で描かれており、ザケンナー自体の巨大さとともにルミナスが感じている威圧感をきっちりと描いている。カメラはほとんどパンすることなく、キャラクタが上下左右に流れるため、ルミナスが頑張って動いているという躍動感がある。
例えばMH第10話のアクションを見てみたのだが、ビブリスとブラックの組手シーンだと、カメラはふたりを捕らえつづけ、代わりに背景を流して移動を表現している。ホワイトが吹き飛ばされてパン箱の山にたたきつけられるシーンでは、カメラがパンしてホワイトを捕らえつづけている。その他ブラックが壁にめり込むところ、ふたりがザケンナーに飛び掛るところなど、カメラがパンするカットがかなり出てくる。
MH第9話のアクションでも、ブラックとホワイトが吹き飛ばされるシーンではパンしている。MH第8話では、突撃してくるウラガノスをカメラは平行に追っている。このシーンなど、ワンカットでもカメラを固定してウラガノスを左から右へ流せばスピード感がもっと増すと思ったりする。というわけで、今回のパンなしカメラはいいなあ。毎回やられると飽きるかもしれないけれど。

BLEACH風味

ホワイトがザケンナーを投げるときにホワイトがザケンナー接触する0.2〜3秒のカットが入ってるとわかりやすかったですかね。最初の対ゲキドラーゴ戦のときみたいに)
id:dokoiko:20050417、itamasuさんコメントより

今年に入ってから塾生対策でジャンプを流し読みしているのだが、BLEACHの描かなさっぷりには驚いた。ちょうどそのころのBLEACH
剣を構えている止め絵→効果音もしくは描線→剣を振った後の止め絵
の繰り返しだったからで、BLEACH読者は絵が一番躍動する場所を脳内補完しながら読むということになっているのか?
そんな感じが今回のほのかアクションだったのだが、BLEACH含めそれはそれでまあなんというか、スピード感が出ているということで。