3 記号から絵へ

人が絵を描き始めたとき、それは単に絵だったはずだ。絵が無いのに絵を何かの手段にするなどと考えることはできない。絵が絵として認知されて、徐々にそれを何かの手段として使われはじめる。そして何かの手段として使われ始めれば、手段としての効率を求めて絵は手段の度合いを強め、特定の意味を持ち始める。一度意味を持つと、意味を表現できれば手段は単なる手段になる。
例えば女子高生のスカートはミニだが、最初は服飾としてのミニを制服に持ち込んだ。しかしミニが定着すると、ミニであることが意味となる。そこではもうファッションではなく、長さの問題になってしまう。短ければ短いほどよいということになり、おパンツが見えるまで丈を短くすることが「かわいい」ことになる。スカートの短さに意味を見出す女子高生の間だけで通用する文法になってしまうわけで、その狭い文法を知らない他者から見ればおパンツが見えるまで短くするなどというのはもはやファッションとしては理解不能な意味の地点に到達しているわけだ。
そんなわけで、アニメにおける人物描画がフォーマットとして定着し、アニメをずっと見つづけている大きなお友だちとの相互作用でだんだんと意味を純化させていくトレンドを無視するものとして「ふたりはプリキュア」は構想されたのだろう。そういうときに過去へさかのぼるという手法は、絵画だけではなくいろいろな分野において用いられてきた普遍的な手法である。ルネサンス=再誕生という言葉はずばりそのものである。
ふたりはプリキュア」の絵が古いということは、絵を記号ではなく絵そのものとして取り扱うための方法である。絵にこめられた記号を知らない小さいお友だちや、絵を読む訓練を経ていない大人にもすんなり見ることができるような方法である。