3 偽者としてのカミングアウト

今回第37話はなぎさとほのかが初めて衆人環視の中でプリキュアに変身する話だった。京子夏子が出てくるとそういう回になるのかな。しかし上でも書いたのだが、プリキュアであることのカミングアウトは偽プリキュアとしてのカミングアウトだった。いきなり本物のプリキュアとして衆目の中に出てしまえば、衆人の目には理解不能な怪物として受け止められるかもしれない。
その点、今回の目撃者たちはあらかじめ閉ざされた演劇的空間に入り込んでいるため、鎧ザケンナーがわんさか出てきても本気で攻撃を仕掛けていても驚かない。というよりも非日常が演出されて眼前に展開されることを期待しているから、舞台上が非日常であるほどそれを受け入れてしまう心理情況にあるわけだ。
そんな情況でなぎさとほのかはプリキュアへと変身したのだ。観客はあっけに取られながらも、まだ演劇の範疇としてプリキュアを受け入れている。ジュネが天井を破壊するのはちょっと演劇の範疇も超えているが、直後にジュナが風のエネルギーを解放した瞬間に校長先生と教頭先生の目が飛んだ描写があり、そこから先は観衆の記憶には残っていないということだろう。そしてやっぱりジュナ退却後には天井が元に戻ったはずだ。
観客にとっては、なぎさとほのかが突然光に包まれなぞの衣装を着て登場、ジュナが出てきて舞台上で風を巻き起こしたところまでを覚えていて、次の瞬間には元の衣装に戻ったロミオとジュリエットが演技をしているわけだ。よくわからない演劇だな。
まあとにかくなぎさとほのかは衆目の眼前で何かよくわからない何かに変身した。演劇という安全な虚構としてではあるが、何か黒と白の衣装を着た何かになったらしいという事実は周囲の記憶に残った。その記憶がある限り、次に本物のプリキュアとして衆目の面前に現れたとしても、なぎさとほのかはなんとかなぎさとほのかとして受け入れてもらえることだろう。