キリヤの計算と誤算


要約:第13話、下校の夕方駅のホームで交わされた冷酷少年キリヤとほのかの第一ラウンド。そこでキリヤが見せた計算と誤算は、重要な要素として今後の物語を大きく盛り上げることとなるだろう。
第13話においてキリヤがほのかに接近した駅ホームのシーンでは、キリヤが意外の表情を見せたばかりかほんのりと頬を染めさえした。その態度に対する評価がいまいち定まっていないような気がする。一方の極は「あれはキリヤがほのかに何かを感じ取ってしまったのだ」と不意の感情がキリヤに芽生えたのだとする。他方の極では「あれは計算高いキリヤがほのかの性格を読みきった上での演技なのだ」と意識された反応だとする。まあかなりの方々はキリヤが以外の念に打たれたということで了解の一致を見ているようなのだけれど、とはいえいまいち居心地の悪い感じがあるように思う。時の流れに身を任せるという方々もいらっしゃるのだけれど、評価をおこなう文章を読む限りそれら評価にはそれなりに振幅があるということだ。

それはたとえば第8話が陰影を多用していたことに対する評価の分裂とは位相が違う。第8話の陰影が何を表現しようとしたのかについては明らかなのだ。映像で表現された物質的陰影は、映像では表現されない心的陰影なのだ。そしてそのような意図に対して誰かは肯定し、別の誰かが否定する。

しかし今回第13話でのキリヤ対ほのか第一ラウンドは違う。あの駅ホームのシーンでは何が表現されていたのかという評価の前提が視聴者たちの間で了解されきっていないのだ。これは物語の語り方の問題だろう。

まあ物語の受け取り方に正解というものは無いのだ。とは言え私の中でもいまいちすっきりしないものがある。このシーンをどう見るかによって、今後物語を引っ張っていく敵役としてのキリヤへのまなざしが違ってくる。それは今後物語をどう理解するかという根幹に関わる。ということで私の気持ちを整理するためにもキリヤの気持ちを推測してみよう。

私の個人的な見解としては、最初にキリヤが見せた抜けの表情と頬の赤味は彼の演技だったが、やがてすぐにそれは演技ではなくなってしまったのだと考える。ほのかとのこの第一ラウンドでキリヤが見せた計算と誤算は、重要な要素として今後の物語を大きく盛り上げることとなるだろう。