4 戦後思想をなぞるプリキュア

以上、ここに持っていこうという書き方をしているのであまり詳しく書かなくても良い気がする。ドツクゾーンにおけるジャアクキング様復活という大義と、そのためにあのお方を育てるというのは、明治政府が目指した(目指さざるを得なかった)国家と国民の関係の仕方である。といっても明治政府がドツクゾーンのように悪であったということを言うわけではない。ただ国のために個は無条件で命を捧げるべきであるという関係のかたちがそうであるということだ。そして対米戦に負けるまで、公式の言説としてはバルデスを始めとする闇の四人のような姿が理想とされた。一生懸命大義のために生き、大義のために死す。
それに比較して、プリキュアたちは戦後の大義を体現している。クイーンと世界よりも九条ひかりを選んだということは、命は国家より重い、地球より重いということだ。ただし戦後の大義とMHが異なるのは、戦後の大義には人を超える存在がいないということだ。だから戦後の大義に対応するのは、無印時代のなぎさほのかである。
戦後の大義は人より価値のあるものを全て拒否した。だから80年代が現出した。69年までの若者は、戦前に育った親たちに育てられた。親たちは人よりも価値あるものが認められていた世界で育った。それが間違っていたにせよ、正しかったにせよ。その親に育てられた69年までの若者は、国家を信じないにせよ個人より大切な別の何かを信じることのできる体質を身に付けていた。戦後第二世代はそのような体質を身につけずに育った。だから80年代が現出した。
というのが無印プリキュアにも当てはまる。無印ではプリキュアたちにはお互いしかいなかった。だから彼女たちがドツクゾーンの面々に対して大義を語り始めると、id:dokoiko:20060117で感じたような居心地の悪さを僕は感じていたのだと思う。