3 世界への信頼〜九条ひかり

あのお方とは逆に、九条ひかりは自身について何の疑いも持っていない。それは彼女が周囲のすべてから愛されており、世界に承認されていると確信しているからだ。なぎさほのか、獣たち、あかねさん、クラスメイト、ハーティエルたち、そしてクイーンの心。みなが九条ひかりを愛し、彼女の存在を承認している。彼女としての彼女がここにいてもいいんだと承認している。
九条ひかりが持つ自己承認の強固さは、周囲のすべてに支えられた確かな基盤を持っている。九条ひかりの自己は、周囲とのつながりを経て世界へとつながっている。九条ひかりにとって、世界が存在していることが自明であるのと同じぐらい、自身が存在していることもまた自明なのだ。
だから九条ひかりは、あのお方と出会っても自分について何も口にしない。九条ひかりの目に見えているものは常に世界であって、自分ではない。九条ひかりはあのお方を見つめ、あのお方を理解しようとする。