2 無意識への不安〜あのお方

あのお方は九条ひかりと出会い、彼の心を明かし始める。彼の告白は内側にこもっている。九条ひかりのことはまったく見えていない。自分とは何か。自分が成長するとはどういうことか。自分は何になるのか。
彼は自分の未来を想像することができない。それは彼が世界から断絶させられているからだ。世界のすべての事物が織り成す網の目のなかに自身を位置付けることにより、ひとは自身の相対的な位置を認識することができる。世界における相対的な位置付けのみが、われわれが自分について手にすることのできる唯一の位置感覚である。