2 幕間:完璧じゃなくてもいい

今回のテーマは二つある。ひとつは完璧じゃなくてもいいということだ。それが象徴的に現れているのは、ベローネ初得点の志穂シュートである。ミスが得点につながったシーンだ。なにせこれまでのラクロス編では、ミスはミスでしかなかった。志穂がミスして音楽が乱れた時は単なるミスだった。しかしその直後なぎさと莉奈が唖然とする絵が入ったので、点が入るなと分かった。物語の転機として非常にインパクトあるシーンだ。
このシーンにより強調したいテーマが、完璧を目指している御高倶女子へのアンチテーゼであるということが非常に明らかになっている。まあ御高倶女子が完璧を目指しているというのも明白なので、志穂のへろへろシュートがなくてもテーマは伝わる。
しかしここでは製作者たちに注目したい。へろへろシュートが入るというあえてこれまでとは正反対のラクロス戦描写を入れたことは「完璧じゃなくてもいい」というメッセージを強調する行為だ。これまでも特になぎさは完璧ではなかった。しかしラクロスだけでもそうだし、ラクロスとはいえ戦いの描写でミスが価値として扱われたのは多分これが初めてではないかと思われる。
手をつないで、完璧になって、勝つ。というのがシリアスな場面での定式だった。しかしこのシーンではじめて、シリアスな場面ですら完璧じゃなくてもいいという描写が出てきた。これはかなり大きな転向ではないかと考える。