披露宴再び(3)

前回のあらすじ(西暦2005年10月21日04:30)

「最低だ…… これって」
どう見てもエヴァじゃない。どっちかというとゲッターロボとかそんな感じ。やばいやばいやばいって。緩やかな曲線にしないといけないのだが、本番二日前である。
注:エヴァ初号機の造詣についてはhttp://www.geocities.co.jp/Playtown-Queen/9611/eva.htmlのあたりを参考にしてください。

装甲板は摩訶不思議!?はっきりいって謎だらけ!(西暦2005年10月21日04:30-05:30)

できないことが分かったら、できることから片付ける。背中を覆っているパーツに取り掛かる。首筋にエントリープラグの挿入口があったり、バッテリーパックがあったりするアレだ。
本番前の準備ではおそらく色が塗れないので背中をどうにかしなくてはならない。また背中にパーツを背負わなければ、エヴァじゃなくて単なる色塗った人である。背中のパーツは直線が主体なので頭部よりは何とかなるだろう。基本的に直方体を作り、中央のエントリープラグ部分を山型にする。左右の排気口っぽいのは、ちょっと下向きに角度をつけて五角形っぽくして、後は色でごまかそう。
上部は何とか肩部板状装甲よりもリアルな感じに整形ことができた。しかし上部造形のツケが下部に集中されている。下部は個別にダンボールを切り出し、しかもあわせるべき切り口は立体成形しなければならない。時間があればだいたいのかたちに切り、パーツに当てながら微調整することはできる。しかし頭部拘束具という大問題を放置しており、塗装も残っており音楽も作らねばならない。下部は見えないところなので、内側を黒く縫ってごまかすことにする。
背中のパーツ作成は幸運だった。設計図無しの一発勝負だったが、それなりにネタを支えることができる程度の機械感を得ることができそうだ。このパーツがダメダメだったら、これ以上気力を出すことができなかっただろう。
背中の下半分の手当てを考える。背中でも下部は塗って塗れないことは無い。しかし塗りきれなかった場合出し物としてどうしようもなくなるリスクを避けなければならない。ということでエヴァ背中のひし形拘束具はダンボールで作成することとする。お客さんはだいたい正面を見るわけだ。だから正面がほぼ裸体であれば、インパクトはあまり変わらないだろう。
背中を覆うサイズの長方形を切り出す。鉛筆で縦にひし形を4つ描く。一番上は大きめに描く。長方形の上部を10センチほど取っておき、後で背負うパーツの下部に貼り付けるようにする。これは色を塗らないと見栄えが分からない。ひし形を青、残りを黒で塗る。鏡の前で背中に当てる。
……ただの長方形だ。ちっともエヴァじゃない。そう見えてしまう理由は、長方形の板だからだ。背中にフィットしていない。背中にまといつくように弧を描かないものか。手で曲げてあわせてみる。力を緩めるとまた板に戻ってしまう。考える。ひし形ひとつずつに切ったらどうか。それらを草摺のように組み合わせれば、背中の湾曲にフィットする。背中を丸めたりのばしたりしても追従するはずだ。
ひし形に合わせて長方形を4つに分断し、草摺りのように下の部品を上の部品の下に重ねるようにして裏をガムテープで仮止めする。鏡で出来栄えをチェックする。完璧だ。背中だけエヴァだよ。

ど〜なる?ど〜する!?禁じられた編集(西暦2005年10月21日05:50)

背中のめどが立ったところで、もう窓の外が明るくなっていることに気づく。音楽にもめどを立てておく。第19話を映像と音声に分離する。音声を編集ソフトで開…… かない。第2話の音声を編集ソフトで開…… かない。やばいやばいやばい。初稿台本の前提が崩れてゆく。根本的にネタを変更しなければならない。
ネタの根本的な再構成が必要となった。作業を中断し、寝る。

颯爽登場!その名はエヴァンゲリ…(西暦2005年10月21日08:20)

7時におきてシャワーを浴びて支度をして出勤。電車に乗る。つり革につかまりながらネタの再構成を考える。何より制約条件になっているのは頭部拘束具であり、昨夜(というかつい3時間前)の雰囲気を考慮すると、エヴァだと言い張ることができる頭部拘束具は作ることができない。徹夜したとしても納期が明日の朝8時ごろであり、作業時間は最大12時間であるし、さらにネタそのものもエヴァ初号機を知っている人はおそらく少ないというか、エヴァの暴走を知っている人じゃなければ正直面白くないだろう。まあネタの方向はあらかじめキモオタ鑑賞であり、さらに不可解なパワーで痛さ暴走なのだが。とにかくネタ出しだ。頭部拘束具の作成がダメだと仮定して考えてみよう。その場合顔を出しているわけだ。塗ってごまかすことになるだろう。塗るとすると、ターミネーター2の敵があるな。全身銀色に塗るだけだ。銀色のフェイスペイント絵の具は昨日東急ハンズで見た。しかしダメだ元ネタが古いしネタをどう構成したらよいか分からない。あー全身白とかそういうのならセカンドインパクト時のアダムでも…… ダメだダメだそれはわかんねーよ。更に買った絵の具が無駄になる。まず冷静に現状を考えよう。絵の具がある。青。青だよな。体が青くて顔も塗ってみんなが知っているってのは何だろう。やっぱりドラえもんだよな。ドラえもんか。色は青いけれどどうするんだよあの二頭身。そういえば、リアルドラえもん系のネタっていっぱいネットに転がってるよな。8頭身ぐらいの… 8頭身ぐらいのマッチョな… 8頭身ぐらいのマッチョな青い…
それって初号機じゃないか! 初号機の体じゃないか! とすると、初号機のボディにドラえもんの頭が乗っかっていたら面白いんじゃないだろうか。ドラえもんはおそらく全員が知っているだろうから、造形もドラえもんっぽいほうが良いな。顔は白く塗って、鼻を赤くしてひげもかいたらどうか。首に赤いロープを捲いて大きい鈴を付けようか。鈴はおそらく東急ハンズのクリスマス売り場で買えるだろう。ボディ前面もこの際白く塗って、四次元ポケットを描こうか。リアルドラえもん路線なら忠実に似せる必要がないから、絶対にポケットじゃないだろうというように半月型に輪郭を書くだけで良いだろう。名前はインパクトがあるといいな…
エヴァンゲリえもん

颯爽登場!その名はエヴァンゲリえもん(第二稿)

司会者「それでは続いて、新郎の友人であるエヴァンゲリえもん様よりご挨拶をいただきます」
ドラえもんのテーマ。エヴァンゲリえもん、ごく普通に歩いてマイクまで。
エヴァンゲリえもん「こんにちは。ぼくエヴァンゲリえもんです。未来からやってきた汎用猫型決戦兵器、人造猫型人間エヴァンゲリえもん3万2158号機です。新郎くん、いままではいろいろ助けてあげたけれど、今日からは横にいる新婦さんとふたりで頑張るんだよ。じゃあさようなら」
あとなんか適当にやって、終劇
ポイントとしては、採番にタマネギ部隊ネタが入ったことだ… じゃなくて、これはただのリアルドラえもんでやったほうが面白いんじゃないかということだ。ネタもなんか中途半端である。しかし「汎用猫型決戦兵器、人造猫型人間エヴァンゲリえもん」の響きが心に取り付いてしまい、取り敢えずこの方向でやろうと思った。もしアレならごく普通のリアルドラえもんになればいいし。

気をつけて!dokoikoの買出し支出がいっぱい(西暦2005年10月21日19:00-18:00)

勤務終了後に東急ハンズへ行く。インフォメーションボックスのお姉さんにロープとクリスマス関連の場所を聞く。ちょうど良く2.5センチ幅の赤い紐があった。これまた直径10センチのゴールドの丸いクリスマス飾りも置いてある。ご丁寧に取付金具までついている。完璧だ。昨日と同じくフェイスペイント売り場に行く。赤が無い。白も無い。赤は昨日購入したオレンジで、白は銀色で代用することとして購入。接着テープは都合よく赤い布テープがあった。エヴァだとダメだが基本骨格をドラえもんに変更したので、赤いテープでも首紐とカラーコーディネートできる。更に都合が良いのは、紫が置いてなかったお陰で青を購入していることだ。顔と手と足と腹を白くして、腹にポケットを描いて全身を青く塗ればそれだけで取り敢えずドラえもんだろう。
購入を済ませると新郎から電話が入る。明日よろしくとのこと。というかプリキュアだけは勘弁してくださいとのこと。
「ばっちり。プリキュア無し無し」
「よかった〜」
「その代わり」
「その代わりって」
エヴァンゲリえもんで」
「…… ちょっと頼むわ。あかんてそんなの」
「えー」
「向こうの親父さんがめちゃめちゃ堅い人で、娘をちゃんと送り出したいって気合入れてるから」
「なるほどねー。そりゃ大変だ」
エヴァンゲリえもんは二次会で頼むわ」
「わかったッス」
「じゃ、明日」
「明日」

邪魔させない!ふたりの一番大切な日(西暦2005年10月21日20:00-西暦2005年10月21日04:00)

帰宅。取り敢えずパーツの組み上げを始める。赤のテープで肩部板状装甲を組み上げる。赤いテープなので堂々と接着してもそのまま装飾になる。二つ目も組み上げる。鏡の前で両肩に嵌める。よい感じだ。肩のパーツもテープを張って組む。こちらは接合部だけを留めると中途半端になってしまうので、輪郭線となる曲げ部分にもテープを貼る。肩のパーツを背負わなければならないわけだが、これは肩部板状装甲を接着することでしのぐことにする。肩部板状装甲も固定されるし一石二鳥とはまさにこのことである。肩のパーツが体に当たる部分を二枚構造にして、両方で前後から肩部板状装甲の後ろ側を挟むように仮組みする。鏡の前で装着してみる。更によい感じだ。一度元通り三つにばらし、ポスターカラーを取り出して塗る。青が乾くととても鮮やかに発色した。排気口は黒く塗る。更に更によい感じだ。

デジカメをプレビューして、ひとりほぼ全裸で段ポールを装着した写真に映す自分に気がつくと4時を過ぎていた。体がドラえもん色になればかなりイケるだろう。つーか二次会ネタ以上にはならない(ただし二次会ネタとしてはそれなり)と思いつつ寝る。
(つづく)