4 家族を越えて〜世界への扉

ということでここからマックスハート第15話に戻る。「ふたりはプリキュア」は、全てを生み出す光の力をめぐり、光の園の伝説の勇者プリキュアと、ドツクゾーンの魔人たちが前線で対決を繰り返す物語だ。ドツクゾーンは悪として造形されており、悪と対決するプリキュアたちは善である。彼らが善と悪とに分類されるのは、ただ周囲に迷惑をかけるかどうか(自分以外の生命を大切にするかどうか)ということにある。魔人たちとの対話でなぎさとほのかが語ってきた言葉から判断する限り、彼女たちの認識ではそうである。そしてなぎさとほのかが主人公である「ふたりはプリキュア」としてもそういうことになるだろう。ここでも善と悪は理念の問題ではなく実感の問題になっている。
よって、プリキュアたちが善であることを証明するためには、1)独善を拒否し、2)周囲の命をどれだけ実感できるかというところにかかっている。そういう状況にあるときに、実感の世界が家族の領域で止まっているというのは、ぶっちゃけ闇の魔人たちが彼らと彼らのジャアクキング様のために戦うのと変わらない。どれだけ多くの人たちと直接的間接的に手をつなぐことができるかどうか、それがプリキュアたちの正義を担保するし、プリキュアたちがジャアクキング様に打ち勝つエネルギーとなる。プリキュアたちは、彼女たちの実感を家族の領域にとどめておいてはいけないのだ。
だから、無印総決算の第二次ジャアクキング様決戦の直前、突然第42話から第45話までの話数が語られたのだ。ジャアクキング様に打ち勝つために、なぎさとほのかは世界に生きる多くの人たちともう一度手をつないでおかなければならなかった。そうやって正義を確認し、正義のエネルギーを貯蓄しておかなければならなかった。
こういう構図は、無印ではうまく視聴者に説明できなかったのだと思う。しかしMH第15話では、ひかりが家族を越えるつながりを世界と結んだことがよく分かる。ひかりが世界への扉を開けたことがよくわかる。これでようやく、ひかりは正義のエネルギーを利用することが可能となったわけで、戦闘フィールドで立ち尽くすということはこれからだんだんと少なくなっていくものと思われる。