2-4 光の力にかき消される

閑話休題。光のクイーンが光の力にかき消されてしまう、と書いた。しかし具体的にはどういうことだろう。すべてを食い尽くす闇の力にジャアクキング様が食い尽くされるということは、なんとなく分かる気がする。ジャアクキング様はずっと自分の世界ドツクゾーンにいるときでさえ、鎖につなげれて動くことが出来なかった。これは闇の力が本質的に内向きの力であることを示している。自分の世界であるドツクゾーンですら、ジャアクキング様は一歩として動くことが出来なかった。誰かに鎖で縛られていたというよりも、自らを鎖で縛り付け動けない状態にしていたのだろうと考える。これは、いったん引きこもってしまうと外部世界(具体的には自分の部屋の外)に出られなくなってしまうという状態を象徴している。本人は出たいと思っても、体が外出を拒否するわけだ。それは実のところ、深層心理が身体を操作して「でられない」という客観的理由付けを行っているという話であって、本質的にはやっぱり出たくないということだ。ジャアクキング様を縛り付けている鎖が、実はジャアクキング様自身により自分に巻かれたものだと考えるのはこれが理由だ。で、引きこもっていたら食べ物も無く死んでしまうところだが、それは親を使ってなんとかする。5人の魔人や分身が、引きこもり者にとっての親にあたる。
話がなぜかジャアクキング様になってしまったのを元に戻して、光の力とクイーンの話である。ぶっちゃけ、キルケゴールが『死に至る病』にて提示した「無限性を失った絶望」が闇の力に食い尽くされたときのジャアクキング様であり、「有限性を失った絶望」が光の力にかき消されたときのクイーンだと書いてしまえばそれが全てだったりする。(講座 セーレン・キルケゴール「死に至る病」(3)その60、その61あたり参照)
つまり、理想があまりにもすばらしすぎるとそのすばらしさに心を奪われてしまい、自分を理想に同化してしまうのだ。だが人間は理想ばかりを見てすごすわけにもいかない。理想から目を離して後ろを振り返ったとき、自分が心を奪われ同化してしまった理想とはかけ離れたどうしようもなく醜悪な「現実」が限りなく広がっている。
これと同じことが、もし光の力をクイーンが自らの内に入れてしまったときに起こるのだろう。光の力の完全さを感じてクイーンは自らの内側に存在する完璧さの虜となってしまい、光の園やその他の世界に生きている多くの命のことを顧みなくなるだろう。たとえば自分がどのぐらいの存在かという検分を忘れて思想や正義や運命や宗教にはまったり、人種や文化や門地出自を絶対視したり、そういう人はたくさんいますね。