2 成長しないプリキュア

プリキュアのふたりは成長していないのではないか? キリヤもこのままでは単なるエピソードとして忘れ去られてしまうのではないか? イルクーボ戦を振り返ると僕は荘思わざるを得ない。
イルクーボは闇へ帰っていった。プリキュアが勝利したからではない。イルクーボは完璧にプリキュアたちを凌駕していた。イルクーボプリキュアたちの肉体攻撃をことごとくいともたやすくあしらった。イルクーボプリキュアマーブルスクリューを息ひとつ乱すことなく握りつぶした。そしてイルクーボメップルとミップルが所持していたプリズムストーンを何かの力で引きずり出し手に入れた。彼の何かの力が発動したとき、プリキュアの二人とメポミポの二匹はただ慌てるしかなかった。
そこまで完璧に勝利していながら、イルクーボは闇に帰った。なぜか。彼がことごとく奪うことに成功したプリズムストーンがすべて彼の手に渡ったとき、プリズムストーンは「すべてを生み出す光の力」を解発した。その解発された光の力が彼の予想を上回る力だったため、彼は自ら手に入れた力によって破滅した。彼がプリキュアたちよりも弱かったら、彼が石の番人を異なる次元から引きずり出す力を持たなかったら、彼がメポミポの尻尾からプリズムストーンを奪取する能力を持たなかったら。つまり彼が現実の彼よりも弱ければ彼はあの山の中で闇に還ることはなかった。
だが彼はやはり弱かったから闇に還った。彼はすべてを生み出す光の力を受け止めきれなかったから闇に還った。彼が光の力を受け止める力を持っていたら、彼は闇に還らなくてすんだ。彼はすべてを生み出す光の力よりも弱かったから闇に還った。
ではなぜ彼は前回までに手に入れた5つのプリズムストーンをそのまま所持していたのだろう。石の番人をジャアクキング様に預けていれば、彼はすべてを生み出す光の力を一身に浴びることはなかった。このあたり先週に書いたことの繰り返しになるのだが、イルクーボについては物語の中で何も描かれていないに等しい。だからイルクーボの行動に対して「なぜ?」と問うことは無駄に等しい。ほとんどのところを視聴者が妄想で埋めなければならないからだ。
まあ「なぜだか良くわからないがイルクーボプリズムストーン(石の番人とプリズムホーピッシュ)を自分で所持していたということで納得して話を先に進めてみよう。それは後で考えてみるとイルクーボのミスだった。プリキュアたちはイルクーボのそのミスのおかげで勝った。キリヤ戦はキリヤが戦いを止めた。ポイズニー戦は気合で勝った。ゲキドラーゴ戦はなぎさの家族愛で勝った。ピーサード戦はほのかの理念好きで勝った。すべて彼女たちがそれまでに持っていた資質、または幸運で勝ち残ってきた。ではそれらの戦闘の中で彼女たちが何かを知り、成長したのかというとよくわからなくなる。