2 ポイズニーとキリヤ:ねじれた安定


要約:ポイズニーとキリヤはそれぞれ異なる性格を持っているが、おたがいの中でも二つの異なる性格を持っているためひとりずつでも存在感があり、彼らがタッグを組めば強力な「裏プリキュア」となるだろう。
ドツクゾーンからの敵として始めてタッグを組んだポイズニーとキリヤ。彼らふたり最初のツーショットでの会話を振り返り、ポイズニーとキリヤの性格を考える。すると今までのふたり*1とは異なり、新たなふたりはそれぞれ性格に異なる広がりがあることが分かる。しかも二人の性格には重なる部分が少ないがゆえに、ふたりそろえばかなりの強敵となるだろう。なぎさとほのかの日常にとっても、ブラックとホワイトの戦いにとっても、ポイズニーとキリヤのタッグは危険な存在になってゆくだろう。

それでは時間軸に沿わなくなるのだけれどポイズニーとキリヤの会話を思い出してみよう。
「めずらしいんだワン」
「えぇっ?」
「あんたがあしらわれるとはね、キリヤ」
「…」
「バカねぇ冗談よウフフ」
「分かってないなあ。ポイズニー姉さん」
「ワン?」
「僕はあのふたりに興味があるのさ。ピーサードとゲキドラーゴを倒したのは事実だからね。簡単に始末しちゃ面白くないだろ」
「んふ。言い訳も上手ね」
「そういう姉さんはどうなのさ」
「うっ」
「それより、名誉挽回の方法を考えたほうがいいんじゃないかなあ」
「ふん。あんたに言われなくても分かってるわよ」
「よかったぁ。がんばってね、ポイズニーネエサン」
「ありがとう。私のかわいいオトウトキリヤ」
ここから読み取れるのは、キリヤが冷酷だということとポイズニーがお茶目だということだ。何しろポイズニーは犬に化けていて、そのまま立ってしゃべるのだ。

とは言え彼ら二人の性格はそれほど単純ではない。まずはポイズニーをみてみよう。ポイズニーはその直後キリヤに
「ところで。その姿もかなり目立つと思うよ」
と冷静な一言を受けると、自分がドツクゾーンでの格好そのままで人間達の世界に突っ立っていることに気が付く。本人としては精一杯冷酷を装ってはいるものの、本質は周囲の状況を計算することを忘れがちで直線的に突き進む性格であることがわかる。こういうところはご近所の行き遅れ自称キャリアウーマンのような性格だ。そして自分の異形具合を認知すると
「えっ… ウソッ… うぐっ… マジ?」
と思いっきりあせりまくっている。
また第12話では形勢不利と見るや脱兎の如く退散したし、今回第13話の戦闘においても美形会場係員に化けるというなかなかな作戦を使うしたたかなところを見せたと思えば、
「どこかで見てるんでしょ。出てきなさいよっ」
というホワイトの挑発を小ばかにするように
「そーんなこといわれちゃうと出て行きたくなくなるのよねえー」
と交わしつつちゃっかり現れてはブラックを手玉に取ろうとする。このようにポイズニーはなかなか複雑な性格をしていて、今回の戦闘でプリキュアのふたりはポイズニーのペースに巻き込まれてしまっている。

次にキリヤを見てみよう。キリヤは先の会話でわかるように冷酷な自信家である。姉さんであるポイズニーよりも精神的には大人であり、大人のポイズニーは精神的にやんちゃ娘である。容姿と精神をあべこべに割り当てられることで、このふたりのやり取りが結構見ごたえのあるものになっているしひとりでも存在感がある。そんな一見敵としては完璧なように見えるキリヤだが実はそうでもない。ポイズニーとは異なりキリヤはプリキュアの二人に興味を持っている。さらに姉さんとの会話が行われる直前、キリヤはほのかに対してためらいの感情を見せている。頬を赤らめてみたり目をそらしてみたり、冷酷な自信家の態度ではない。

ポイズニーは直球情熱ズッコケ娘の割にはプリキュアに対して冷酷であり、キリヤは冷酷老獪策士の割にはプリキュアの何かに惹かれるものを感じている。前ふたりは単純な性格だったから結構簡単にプリキュアに敗退を続けた。今回のふたりは性格に広がりがあるので、いままでのように簡単に敗退することは無いかもしれない。それは性格の複雑さが彼らに広い足場となっているということで、彼らはひとりひとりで安定してプリキュアと渡り合えるということだ。またそういうふたりがタッグを組んでいるということはお互いの弱点を補うことができるということで、ふたりが組めばなおいっそう足場が安定して強力な敵になるだろう。ふたりになると力が増すということは、彼らはいわば裏プリキュアである。なぎさとほのかの表プリキュアと彼ら裏プリキュアのつばぜり合いはけっこうながくつづくのではないだろうか。

なぎさのかわいさとほのかの気品についてはまた今度とします。もう十分長々と書いてしまったので。

*1:カブキさんと筋肉さん