1 二つの世界の交錯:物語論


要約:ポイズニーの変身とキリヤの転入により、ドツクゾーンの非日常となぎさほのかの日常が交錯を始めた。物語は動き出した。
なぎほのの魅力全開ぶりについては多くの先輩諸氏から見事な分析や感想が提出されるだろうし、僕はそういう方面にあまり良い文章を書けないだろうからそれは後で書くことにする。比較的僕の領分である(と自分では思っている)硬めのものから言及しよう。

今回キリヤ登場で最も転回したのが物語の構造である。ポイズニーとキリヤがなぎさとほのかの日常へと侵犯を開始したことで、それ以前の敵ふたりでは交わることの無かったプリズムストーンを巡るドツクゾーンプリキュアの物語と学園を巡る友人たちとなぎさほのかの物語が交錯を始めた。ドツクゾーンの敵たちがそれだけ虹の園へと食い込んできたのだ。ドツクゾーンにとってもこれまでの及び腰的な様子見の段階を過ぎ、虹の園を象徴するプリキュアとの全面的な総力戦へと移行する重要な転回を成し遂げている。

それを受けるなぎさとほのかにとっても、いままでふたりが過ごしてきた別々の世界が交錯を始めたのは重要な転回である。カブキさんと筋肉さんの時まで彼らはドツクゾーンから日常の辺境にやって来て、なぎさほのかは虹の園での日常から彼らが侵犯した辺境へ向かい闘った。だからふたりがプリキュアであることとベローネ学園中等部二年生であることとは別々のことであって、二つの世界を生きることで必然的に引き起こされるきしみを偶然にも逃れることができていた。しかしポイズニーが一般人に変身することで、学園外の世界は常になぎさほのかにとって危険なものとなった。そして今回キリヤが転校生として学園内の世界に潜入したことで、今まではドツクゾーンの侵犯を逃れていた昼の日常としてのベローネ学園までもが危険をはらんだ安心できない世界へと変貌してしまった。彼女達に残された全くの日常はお互いの家(家族、家屋)だけになってしまった。

先回第12話では公園の人々とおばあちゃまを巻き込んだ。そして今回第13話ではキリヤ転入で学園の全てを巻き込む状況となり、さっそくユリコと見学に来ていたふたり*1を巻き込むことになった。彼女たち三人は今回身体的に巻き込まれてしまったのだが、見学のふたりが椅子の陰からプリキュアの戦闘現場を目撃したことでなぎさとほのかの学園生活がどうなるかわからなくなった。しかしユリコがブラックとホワイトの正体に気がついていないこと、また見学の二人は
「ふええ〜(すげえ〜?)」
「なに〜?」
と現場を目撃したのがブラックとホワイトの変身直後だということで、なぎさとほのかがプリキュアであるということには気が付いていないという可能性が大きい。ただし第14話でにせプリキュアが登場するということは、少なくとも化け物と闘う女戦士がどこかにいるという事実は周知となってしまったということだ。

ドツクゾーンの物語となぎさほのかの日常の物語が交錯を始めた。果たしてなぎさとほのかの日常は「ずっとこのまま」なのだろうか? 知り合いや同僚に「ふたりはプリキュア」を勧めるのはもうそろそろタイム・リミットだ。物語が動き出した。なぎさとほのかがもう元に戻れなくなる。急げ。

*1:夏子と京子らしい。禁を破って朝日放送の第14話予告を読むことにした。だってやってらんないじゃん。