2 第8話にて

 美墨なぎさキュアブラック)と雪城ほのかキュアホワイト)は、何から何まで徹底的に違う、というところからプリキュアの物語は始まる。何から何まで違うから普通の中学生ならば友達になんかならないし、実際2年生で同じクラスになって枕草子をやる季節になってもほとんど口をきいていなかったという設定だ。この辺は学習塾の教室長をしているのでよくわかる。枕草子はだいたい2学期後半に学習する。塾生たちに付き合って僕も十数年ぶりに暗記しなおしたので今なら冬まで暗唱できる。まあ僕のことは置いておこう。

 そんな彼女たちがあれやこれやでふたりはプリキュアになってしまうわけだ。まあ普通ではぶっちゃけありえないプリキュアになってしまい、しかもドツクゾーンという世界から出張してくる侵略者たちから虹の園(人間の世界ですね)を守らなきゃいけないなどという運命共同体にされてしまう。そういういきなりの展開に翻弄されているうちは、自分たちがそれまでは全く違う世界に住んでいたということとはそれほど決定的な矛盾も無くなんとかやれてしまうわけだ。プリキュアというだけでは日常の生活でいっしょに時間を過ごすリアリティに欠けているから、メップルとミップル(というわけのわからない生き物に出会ったからふたりはプリキュアになってしまったのだ)がラブラブカップルで彼らに引きずられるようになぎさとほのかがいっしょに時間を過ごさなければいけなくなるとか、ふたりが社会見学委員に任命されてしまったから打ち合わせをしなければいけないという設定を入れたりしている。

 まあそれはそれでありがちなのだが、そういうわけでなぎさとほのかはすこしずつお互いのバックグラウンドや性格を知るようになるのだった。それでずるずると親しくなるのならばなんともリアリティの無いおともだちアニメ以上にはならないのだろうし、僕も「ゆかな(ほのか役の声優さん)萌えっ」とか言いながらだらだらと放映を見たり見なかったりということになったのだろう。しかしそうはならなかった。あいかわらずなぎさは志穂莉奈とお昼ご飯を食べているし、志穂莉奈はほのかとはともだちになっていないし、ほのかは相変わらずともだちがいない(というか単独行動)。

 で、第8話の主題になるわけだ。ほのかは自分がなぎさをともだちだと感じ始めていることに気が付き、なぎさのために何かしたいと思った。そんな時に幼なじみの藤Pのことをなぎさが気にしていることをメップルから聞いたほのかであった。偶然三人で登校することになり、びみょーな恋心など忘れて生まれたようなほのかが、なぎさと藤Pを紹介するときひじょーに無神経に「藤Pとしゃべりたいと思っているみたいだったから」と藤Pの目の前でなぎさに言ってしまう。なぎさショーック。走り去るなぎさ。追いかけるほのか。立ち止まった堤防で、突然プリキュア同士になったけれどほのかにずっと違和感を持っていたなぎさが思わず「あなたとはプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだからあっ」と叫んでしまう。ほのか呆然。近くの鉄橋を列車が通る。ほのか愕然(この時の表情ってのがまたとんでもなく傷ついてることがわかるんだよー)。ほのか… ほのか… やっとともだちができたと思ったとたんにこれかよ… 悲しすぎて言葉にならん。

 この後ほのかがなぎさにカードコミューンプリキュアになるためのアイテム)を渡してしまう。うーむ。とはいえゲキドラーゴが来ると説明はしょるがカードコミューンはふたりの手に戻り、ぎくしゃくしたままゲキドラーゴと戦う… というかゲキドラーゴを無視してプリキュア姿で大喧嘩。説明はしょるがお互いがプリキュア手帳を取り違えて持って帰り、結局ふたりともお互いが書いたことを読む。そしてお互いがやっぱりぜんぜん違うことを知り、それでもお互いがお互いのことを気にかけているということも知る。翌朝ふたりはどちらともなく(とは言えある種の確信を持って)あの堤防にやってきて、初めてお互いを「なぎさ」「ほのか」と呼ぶようになるのだった。これがまたよく気を配った演出で泣かせるんだ。なぎさ… ほのか… よかったねえ。でも志穂莉奈(なぎさといつもいっしょに過ごしているなぎさの親友たち)はどう思うんだ…

 そんなわけで第9話ではやっぱり志穂莉奈となぎさが今後びみょーなことになりそうな模様。そんなわけでなぎさとほのかをどう描き分けているのかを表にしてみました。第9話も当然見ている(しかも10回ほど)のだが、前回までこれでもかという具合にふたりの違いを描いていたからだろう、今回は「違い」にそれほど意味をもたせてはいないように感じたので割愛します。