すでにそこにあるもの〜S☆S第2話

ぶっちゃけはっちゃけノーノープロブレム全開のS☆S第2話の感想です。すでにそこにあるものに気が付く、というのがS☆Sの基本路線であると思われる。それは先週見ていたプリキュア初変身までの道のりで予測されたことだった。
フラチョなど聖霊がずっと緑の里(人間界)とかかわりをもっているようだ。それはフラチョがずっとそこにいたということだ。聖霊が宿る自然というのも、ずっとそこにある(というか、自然の中から人間が生まれたわけだが)。
今回舞が指摘することで咲は、いつもそこに吹いていた風の心地よさに気が付いた。そういうことだ。咲が常に世界を生きていて、舞がそれに気がつくという感じでお話は進むのかな。あと聖霊の力で飛んだり投げたりツインストリームスプラッシュだから、里を取り戻したりするとどんどん強くなるわけだな。

 1 相互担保する外部関係と内部関係

今回S☆S第2話では、日常という得体の知れない抽象を「歓迎会」というとても具体的な出来事に集約した。これは二つの効果を持つことになる。
ひとつは咲がプリキュアとして戦うと決意するシーンが、我々視聴者にとても響くものになったということだ。しかし先代でもいろいろと日々の生活を邪魔されたはずなのに、なぜ僕には今回のこのシーンが深く響いてくるのだろう。それはおそらく二つ目の効果に伴う副作用である。
ふたつめは先代が二年かけて達した境地にたどり着いてしまったことだ。無印第8話と同じ「ともだちになる」という全く別のしかし重要な出来事が同時に発生していることで、このシーンが二人の内的関係にも大切な瞬間になっている。もちろん早く到達すればよいというわけではなく、2話分で到達するためには多くの重要な枝葉を取り落とした。先代の到達点とは2年間ずっと戦う理由を(なぎほのではなく製作者達が)探しつづけた過程それ自体であるからだ。
S☆S第2話では咲舞にとって、カレハーンに対して戦うという外的関係の形成と、咲舞がともだちになるという内的関係の形成が同時に立ち上がった。さらにこの二つの関係は、それぞれがおたがいの理由であり結果でもあるという不可分の物として描かれている。すなわち、

  1. 咲は大切な舞の歓迎会を邪魔されたから、舞は大切な咲が酷い目に合わされたから、カレハーンと戦う
  2. カレハーンと戦うから、咲と舞とはおたがいがおたがいを大切に思っていることを知った

というような円環構造をなしている。これは先代の無印第8話がゲキドラーゴを邪魔者として、日常にこだわり抜いて友達となったこととは対照的である。
(更新中)

 2 大人として茶番を見るカレっち

「俺はカレハーン。カレっちと呼んでくれ」
このシーン、放映ではお茶吹かせていただいた。舞が絵を描いている時から登場しているにもかかわらず、カレっちはあの瞬間までニヤニヤしながら眺めているのだ。サーキュラス大先生以上のストーカーというか覗き趣味をお持ちのようで何よりだ。しかしよくよく考えてみると、このシーンにおけるカレっちの行動は単なる受け狙い以上の意味があることに気が付く。カレっちは咲舞の行動をずっと眺めていた。

咲「私も、舞って呼んでいい?」
舞「うん」

ここでカレっちが割り込んでくるのである。かつてのピーサード大先生ならばそんなことにはお構いなく「伝説の戦士プリキュア。石はどこだ」と切り返すところである。ゲキドラーゴ選手であれば彼なりに関係なく「今日こそおまえたちを倒すウガガ」である。ポイズニーもしくはビブリスであれば「相変わらず友情ごっこかい。しかしそんなものジャアクキング様の前では無力でしかない」であろう。
そういうように、これまでの敵たちは日常と無関係に対決の非日常に引きずり込むか、プリキュアたちの大切なものを否定するかのどちらかであった(ビブリスだけは違う感じがする。カレっちはビブリスの態度を引き継いでいるように思われる)。
カレっちは違う。カレっちは彼女たちの日常を理解しており、その上でバカにしているのだ。カレっちもまた(咲舞の)日常と戦いの非日常を往復している。
カレっちは大人として咲舞の無印第8話を外部者として眺めている。そしてそれを「子供の茶番だな」と茶化しているわけだ。カレっちは無印第8話を眺めている視聴者である。「ほんと、子供って単純だよなー」と、咲舞をコケにしている。これは製作者たちが無印を相対化して、無印の重力圏から脱出しようとする決意であると思われる。
と同時に咲舞の大切な心をコケにするカレっちを、咲舞および視聴者は憎らしく思わないわけにはいかなくなる。大人の余裕でふたりの心を馬鹿にしているし、ウザイナーは巨大だし、プリキュアたちはシバかれて苦しんでるとプリキュアの物理的な無力さをもバカにしている。散々馬鹿にされるこの構成は時代劇だよな。というか必殺シリーズだよな。プリキュアたちはウザイナーのツルを捕まえてふんばる。しかしさらにカレっちはふたりを見くびっている。

 3 10倍の100倍

というところでプリキュアたちの反撃が始まるのだが、そこまでやるとは思わないよな。特に無印を見てきた視聴者であれば、ウザイナーをうんしょとひっくり返すぐらいだと思うだろう。それがアレだ。プリキュアとして素の力が約10倍で、聖霊の力が加わるとこの時点でさらに100倍というところであろうか。人がだいたい10メートル飛べるとしたら、プリキュアで100メートル、聖霊プラスで10000メートル。だいたいこんなところであろう。
しかしここまで投げるというのは無印から見てきた僕はは唖然として、次に胸のすく思いになった。カレっちもいい味出してるよな。