1 舞〜ともだちになること

ほのかとの違い

舞は先代プリキュアのひとりである雪城ほのかの位置にある。しかし通常の場合ほのかが対人関係に無頓着であることに比べると、舞は対人関係が苦手であると本人が認識しているようであるし、おそらく客観的にもそうなのだろう。無印開始当初はなぎさとほのかが2年桜組に上がった直後からスタートしている。ほのかは1年からクラスメイトだった志穂莉奈に「うんちく女王」と呼ばれていた。しかもほのかはそれを知らないか知っていても気にしていない。また無印開始時において、ほのかにはクラスで親しい友人がいないような描写だった。ほのかは孤独に慣れているのだ。
舞もほのかと同じく、登場時に友達はいない。しかし舞は5年ぶりに転校してきた中学2年生であり、また舞が自己紹介をするシーンを見ると、咲のクラスメイトたちは小学校でも舞を知らないような描写であった。咲の孤独は選んだものではなく、与えられたものである。
というのは客観的な状況であるが、咲の主観的な状況も第2話では描かれている。

自信のなさ〜ベランダにて

ほのかが「なんだか面白そう」と無印第2話で言えるのは、自身の能力に自信があるからだ。実際無印第8話で限界を与えられるまで、ほのかは完璧な存在のように描かれていた。それに比べ、学校のベランダで「私たちただの中学生よ」と言う舞は、自分が特別な存在に思えていないということだ。
それはともかく、夜のベランダである。舞は夜空を見つめているのだが、兄曰くそれは舞が考え事をしているのだった。プリキュアになってしまったことを考えていたのかと思いきや、咲のことを考えていた。5年前に一度会ったことがあって、なぜだかもう一度会うと思っていた。
舞はここで、自分の状況を別の誰かが説明するかのように語っている。舞は自分の感情を出せない。ほのかがこの状態になってしまうと、いつも決まっておばあちゃまが現れてきたのだった。しかしおばあちゃまは、ほのかに何かを示すことは無かった。おばあちゃまは常にほのかが自分の力で状況を打開するよう、ほのかに力を与えるだけだった。
しかし舞には兄がいて、兄が舞の気持ちを語る。舞にはすでにずっと前から「咲とともだちになりたい」という気持ちがある。気づいていながら踏み出せなかったほのかとは異なり、舞はそもそも自分の気持ちがすでにそこにあることに気が付いていないのだ。
自分の気持ちに気が付かないのは、たぶん自分の気持ちを出して拒否されることが怖い(その後のぱんぱかパンテラスでは自身のことを周囲が見えなくなることがあると否定的に表現しており、舞は自分と他者との間に溝を感じている)。よって兄に「また会いたいって思ったんだろ」と自分の気持ちを表現されると、拒否に近い態度を示す。咲が良くしてくれるのは、自分が自分であるからではなく、自分が転校生であるからだと理屈を言う。しかしその逃げ道をふさぐように兄から「友達になりたいんだろ」と自分の気持ちを再び示されると、ようやく咲は自分の気持ちと向き合うことができるのだった。
その代わり自然に対しては素直に自分を開くことができるようで、学校のベランダで風を感じたりぱんぱかパンのテラスで風景を見つけて写生を始めたりする。ということで話はぱんぱかパンのテラスになる。

「ねえ日向さん。良かったらわたし……」

「……と友達になってくれないかしら」と、舞は続けるつもりだった。自分の気持ちを自分にすら伝えられない舞は何故この言葉を言えたのだろうか(実際は咲に遮られて言えなかったけれど)。
それは舞がすでに咲にとってともだちであることが、舞に示されたからだ。ともだちという関係は、すでにそこにあったということに気が付いたからだ。