母になる九条ひかり、父になれなかったあのお方

九条ひかりはクイーンになると、全ての母になるわけです。現状でもなぎほのは、九条ひかりのほうが自分達より先に死ぬべき存在(九条ひかりとしては消滅する)だと考えている。
これは九条ひかりがすでに、なぎほのにとっては母であることを示しています。通常は親のほうが自分より先に死にます。母(父も含め親ですが、九条ひかりに焦点を絞っているので)とは自らを生み出してくれた、自分を守り育ててくれたかけがえの無い存在です。その母が死ぬということは辛い。できればずっと生きていて欲しい。
しかしそれはありえないことで、いつか母は自分を残して死ぬ。母もまた、子供より自分が長生きしてはいけないと思う。それこそが母であるでしょう。
九条ひかりがクイーンとなるということは、母が子を生かすために死をもいとわぬということであり、母の愛のメタファではないかと思います。子に未来を託して死んでゆく母の。
子を生かす。それが母である九条ひかりにとって一番の幸福である。それは子にとって悲しいことかもしれない。しかしそれが世のならいであり、秩序である。九条ひかりはなぎほのの子として生まれ、愛に囲まれて成長し、母となって子(なぎほの)を生かすために生きる(クイーンとして)。ということなのでは。
あのお方は子として生まれたが、大人になれず父になれなかった。だから子(闇の4人)たちのために死ぬことができない。というかその前に大人にならなければ、愛されなければならない。あのお方の涙について、一義的には自分が生まれたにもかかわらず消えてゆくことに対する涙でしょう。しかし勝手に読みを進めてしまえば、ジャアクキング様の要素であるあのお方にとって、親としての涙でもあるのかと。我が子でもある闇の四人が命の輪廻から疎外された悲しい存在であり、それを帰ることができない親としての涙でもあるのかと。