5 自己実現までの紆余曲折

ということで、三部作を通じて小田島が何をしたかといえば、崩壊の危機からの回復だったと言えるだろう。マドンナとしてのペルソナと、そのシャドウであるなぎさ的なものを同時に認めることが小田島の課題だったのだ。そうすることによってはじめて、小田島はなぎさ無しで生きていくことができるようになる(マドンナを捨ててしまい、全く別の人生を生きるという選択も無いわけではない。しかしそれはなんというか、客観的には辛い人生になるだろうし)。
話の筋を概略すると「自己を見失った小田島(登場時)が、人の道を踏み外し(無印第16話)、次に他者に依存して仮の復活をし(無印第34話)、でも再び危機を迎え最後に自立する(MH第24話)」という感じだ。
お話としては普遍的なパターンだ。けなしているのではない。物語としてしっかりとしたバックボーンを持っているということだ。僕はタクシードライバーを思い出す(ただしトラヴィスがアイリスを自由にするまでです。トラヴィスにとってギャングに支配されていたアイリスは、強大な世間に閉じ込められていると感じていたトラヴィスそのものだ。アイリスをギャングから解放したことは、トラヴィスが自分の心を解放したことになる。タクシードライバーのラストは、アイリス解放で英雄として社会に受け入れられたことで、世間に認められたいというトラヴィスの渇望が満たされたからだろうと思われる。のでラストは別)。