3 なぎさ無しではダメになってしまう小田島

ただし第二部(無印第32話)での小田島復活は、第三部のMH第24話冒頭で明らかになるように、なぎさが近くにいなければならない「仮の復活」だった。
この先に書くつもりのことを先取りしてしまうわけだが、小田島にとってなぎさはもうひとつの自分である。第二部での小田島は、なぎさ無しではダメになってしまう不完全な人格である。
というのも小田島にとってなぎさが象徴する人格は、小田島にとって隠さなければならない内面だからだ。小田島は普段、マドンナたるべしという規律を生きている。マドンナに見えるよう努力している。小田島は他者のまなざしを実現するために演じつづけなければならない。自分の内面であるなぎさ的な人格を封じている限り、小田島は生命力を外部から補充しなければならない。ということで小田島はなぎさ無しでは消耗してしまう。
生命力を消耗してしまう小田島にとって、補充元は強敵(とも)と認めているなぎさしかいない。ということで小田島はなぎさを求めて中等部の合宿先へと向かうのだった。
ということでMH第24話の途中まで、小田島は「マドンナ拒否−なぎさ受容は無意識」の地点にいる。それをチャートにすると以下のようになる。


小田島完結チャート

中盤までの小田島は一貫して無気力である。また九条ひかりが「なぎささんは小田島先輩が大好き」と言うときには、頭を抱えてしまう。高等部の合宿をサボってまでなぎさのところに来ておいてそれはないだろう、という感じである。しかしこのシーンは、小田島がなぎさ的なものに対して最後の抵抗をしているのだ。自分の中でずっと閉じ込めてきたなぎさ的なものに小田島は気がついているが、それを認めることは自らが完璧なマドンナではない(少なくとも現時点では)ということを認めることだ。だから迷っている。しかし合宿所に向かった時点で、もうすでに小田島は引き返せない地点にやって来ているのだ。あとは小田島が認めるだけだ。