序 炎と水

主題の継承

物語のイメージについて。夏休みで宿題という設定は昨年を引き継いでいる。無印第28話「レギーネ登場!ってもう来ないで!」である。しかし物語のイメージを反転させている。
無印の設定をなぞるというのはマックスハートで全面的に採用されている。ほのかの誕生日、社会見学、ラクロスの試合、家族旅行、動物(無印の忠太郎とMHのぽんたの介)、共同合宿、小田島友華、そして今回の夏休み宿題。
これは当然無印と同じ主題を使ってマックスハートの物語を組み立てるという決定がなされているはずだ。人生は繰り返すものだという教訓を感じてもいいし、なぎさとほのかがこれからもずっとこのように日々を繰り返して生き続けるのだという物語世界の語られぬ永続性を感じてもいい。
また、凝った主題を考える手間をかけるぐらいならば、無印で使った物語設定を使いまわすことで手間を省き、浮いた工数を物語の展開に割くべきだということなのだと思う。

炎と水

今回の夏休み宿題という設定では、無印のイメージは「炎」である。Aパートはひたすら暑いと思わせる演出だった。回想でさなえが見たのは焼き尽くされた街だった。初登場のレギーネは赤いコスチュームだったし、爆発する火山のエネルギーは「赤い柱」だった。ザケンナーたちと戦うブラックとホワイトは玉の汗を散らして奮戦した。
ところが今回のイメージは「水」だった。冒頭でさなえおばあちゃまが打ち水をしている。無印でのぶん回る扇風機の音が、今回は風鈴の涼しげな音に置き換えられている。汗をかいているのは雪城家を訪れた時のひかりと少年を楽しませようとがんばるザケンナーたちと貸しボートの爺様だけだった。休憩は羊羹と冷たいお茶を飲みながら打ち水と風鈴の話をして、気分転換に池へ向かってボートに乗る。戦闘は暗く冷たい奈落の底だ。とにかく今回は「夏の涼しさ」を主題としている。