キリヤと最後の少年

これもまたいまごろ気がついたのだが、キリヤと最後の少年について。最後の少年は、ほのかとなぎさを見てもそれがほのかとなぎさだとは気が付いていないようだった。しかし九条ひかり虹の園に現れた時、全く記憶がなくなっていたのだった。
まあ九条ひかりの場合は、クイーンが三つの要素に分裂したうちの命なので、分裂した時点でクイーンの記憶とは分離したということかもしれない。ただしキリヤが成仏したとき、何らかの光の力が彼を手助けしたのかもしれない。キリヤだって闇の部分と光の部分に分裂して、光の部分だけが虹の園に再生したのかもしれない。
また、最後の少年に両親らしき保護者がいるというけんについて。クイーンとジャアクキング様が表裏一体という設定ならば、ドツクゾーン光の園の成立原理も表裏一体だと考えることもできる。九条ひかりがあかねさんを取り込んでしまうのならば、再生したキリヤが誰かを取り込む可能性もある。キリヤが成仏した、というのはおそらく彼ひとりの力では成しえないことだ。もしひとりで成しえるものならば、残りの4人だって勝手に成仏してしまえば、ジャアクキング様から逃れられるだろう(記憶は無くなるけれど)。
でも上記のように仮定してしまうと、もうキリヤはマックスハートに出てこないということになるかもしれないからさみしいな。あ、ジャアクキング様再復活のエネルギーで、キリヤも復活するというのはあるか。

キリヤの言葉

キリヤ「あれからずうっと、光と闇の狭間をさまよってました」
ブラック「光と闇の狭間…」
キリヤ「闇の世界を追われた僕は、そうするしかなかったのです。どうやって生きていけばいいのか。それ以前に、僕は本当に生きているのか」

ドツクゾーン辺境でのブラック、ホワイト、キリヤのシーンでは、この言葉はいちばん重要度が低い。だから今まであまり考えてこなかった。しかし、キリヤと最後の少年との関係を考えているうちに、実はこの言葉が伏線としてかなり重要なのではないかと思うようになった。キリヤはここで、彼が光と闇の狭間にいるうち「それ以前に、僕は本当に生きているのか」と自問自答していたと述懐している。さて最終回のキリヤ成仏シーンでは、次のようなことを言った。

僕はあきらめていたのかもしれない。敵うわけが無いと決め付けて。でも… なぎささん、ほのかさん。あなたたちは信じていたんだ。みんなの力を。自分の気持ちを。ありがとう。僕はやっと分かりました。僕のいる場所が。居たい場所が。

キリヤは、自分が本当に生きているのかどうかに確信が持てなかった。最後の言葉から判断すると、彼に自分が生きている確信が無かったから、だからこそ光と闇の狭間に漂っていたのだということになる。自分がどこにいるべきかに確信が持てないから、どこでもない世界=光と闇の狭間にいたのだ。彼が光と闇の狭間から成仏できたのは、もちろんジャアクキング様が倒されたということにあるのは確かだ。だがその上で、彼が自分は確かに生きている、生きていたいと願うことがなければ、彼はジャアクキング様消滅後にも成仏することはできなかったのだろう。彼が魂の牢獄のような、光と闇の狭間を抜け出ることができたのは、彼がそうしたいと望んだからだ。
やはりキリヤのお話とは、現実の世界における引きこもり少年が世界に還って来るお話として最初から最後まで考えられているのだろう。そう考えると、最後の少年はキリヤの転生だと考えるのが適切だろう。
ある少年は、この世のどこからも断絶したどこでもない場所、自分の部屋を出て世界に還りたいと願った。自分の部屋の扉を開けて、少年は世界に還る。自分の部屋を出れば、そこで少年は精神的に家族と再会する。そうやって家族は再生し、三人で街へ買い物に出る、というわけだ。