5 こころを持つということ

もちろんこれはキリヤに託されたメッセージだ。心をもつということは、普通大切なことだと言われる。しかし僕たちは心をもつということが、ただ幸せなだけではないということを小さなころから何度でも体験して知っている。心があるから、人は泣く。心があるから、人は苦しむ。心があるから、人は悲しむ。キリヤも心が無いときには、正しくは自分には心が無いということに気が付くまでは、悲しむことはなかった。苦しむことはなかった。泣くことはなかった。
しかし彼に心が生まれなければ、彼はこの先ずっと戦いつづけなければならなかった。いつか死が彼を捉えるまで、ジャアクキング様の審判と敗北を恐れながら侵略を続けなければならなかった。その場合彼は悲しまないかもしれない。泣かないかもしれない。しかし彼は多くの他者を泣かせ、悲しませただろう。
客観的に見れば、これまで彼は他者に自分の悲しみを肩代わりさせてきたということだ。キリヤが心をもつということは、その悲しみと涙を自分で背負わなければならないということだ。
そして彼は泣いた。しかし同時に、はじめて彼は笑った。最後には闇の魔人として背負いつづけてきた重荷を捨て、自分が背負うべき悲しみの重荷を背負い、平穏にたどり着くために自ら闇の中へ帰っていった。
心をもっているということは大変なことだ。それは楽しいことばかりではない。それが心をもつということなんだ。
ドツクゾーン編では、そのようなメッセージを僕に残した。それでは復活編はどのようなメッセージを僕に伝えるのか。明日はそこに入ろうと思う。