4 キリヤについて

  • 問題2:キリヤのストーリーはサブストーリー以上のものになったのか

これについて僕はmisakikawanaさんと同じ感想を持っている。misakikawanaさんがキリヤのストーリーを「失敗だった」と位置付けている。「闇に住む者たちの都合を、なぎほののに伝える機会をなくしてしまった」のがその理由だ。全くその通りで、キリヤはあまりに無口すぎた。プリキュアたちがドツクゾーンの情況(プリズムストーンを手に入れなければ遠からず崩壊してしまうだろう事)や魔人たちが置かれている情況(ジャアクキング様の一存で消滅してしまう)を知ることができるとしたら、それはキリヤがほのかに語る以外になかった。そしてキリヤが無口なまま自ら消えていったことで、その機会は永遠に失われてしまった。結局なぎさとほのかはドツクゾーンが切羽詰っていたことを知らないままになった。なぎさとほのかから見れば、ドツクゾーンの魔人たちとジャアクキング様は、彼らの欲望を満たすためだけに光の園虹の園を蹂躙したとも取れるぐらいの情報しか知ることがなかった。
キリヤのストーリーがサブストーリー以上のものになる可能性としては、おそらく二通りぐらいが考えられる。

  1. キリヤがドツクゾーンの危機的状況を伝えることで、なぎさとほのかが彼女たち(とメポミポ)の正義とはほんとうに注釈のつかない正義なのかに答えを出さなければならなくなる。物語の根幹をゆさぶる大きな問題。
  2. キリヤが自分の存在をジャアクキング様に握られているという状況を伝えることで、キリヤを救い出すという考えが絶望にしかたどりつかないことをなぎほのが知る。最終的にキリヤがどのような結末を迎えようとも、なぎほのには過酷な試練となる。それにどう対処するか。なぎほのが精神的な迷宮に入る、出口のない内面の問題。

という二通りのように僕は考える。とはいえこれらはキリヤ編をまともに消化しようとする展開であり、小さいお友だちにとっては理解の範囲を越えるだろう。ここまで真正面に取り組まないにせよ、キリヤが彼の過酷な情況をなぎほのに伝えていれば、第26話でジャアクキング様がイルクーボを消した場面でキリヤの結末をフラッシュバックぐらいには挟むことができたはずだ。キリヤの結末を挟めば、ろくに背景描写もないイルクーボが消滅したあのシーンはほのかにとってとても辛いキリヤ消滅の記憶と重なることになり、物語の深みが出たのではないかと思う。
残念ながら、キリヤのストーリは現段階では完全にサブストーリーとして扱われてしまっている。というよりもサブストーリーとしてしか扱われていない。キリヤ以後の敵となったイルクーボジャアクキング様が何のバックグラウンドも描写されない単なる敵でしかなかったため、ドツクゾーン=悪という単純な図式を越えるとしたらキリヤがその役回りを果たすしかなかった。しかしキリヤは何も語らず消えてしまい、その後まったく省みられることがなかった。まあドツクゾーン=悪という単純な図式それ自体が悪いかというと、僕はそう思わない。しかし最終的にドツクゾーン=悪へと収斂するにしても、もう少しキリヤのストーリーを推し進めても良かったと思う。そのほうがなぎさとほのかがプリキュアであることをより確かに自覚するという描写もできただろう。ただし「ふたりはプリキュア」ではこれまでにも塩漬けのエピソードがふと再利用されることがあったので、なんとかキリヤのストーリーもそうなってほしいと僕は思う。