上司(34)|元番長第8話に轟沈

あまり詳しくは書けないのだが、高校時代は運動部で県強化選手に選ばれ、番長としても名が通ったOS/400スペシャリストSE。それが上司(34)である。それが昨日、課員がせっせと連休前の作業消化に走り回る仕事場でおもむろに私のそばへ近づいてきたのだった。そして作業にいそしむ私の左すぐ近くに位置を取ると、向こうをむいて半身になり右手でアイーンのポーズをとるや否やひじから先をびしっとまっすぐに伸ばし、
「闇の力のシモベたちよ!」と響き渡る声で叫ぶのだった。私の体は自動的にすっくと背を伸ばし、左手が勝手に目の前をびしっと指してしまうのだった。
「とっととお家に、帰りなさい!」
「お前らが帰れよ」そばで必死に作業する同僚が冷たくボソリとつぶやくのだった…

早朝、仕事場前の芝生に座り物思いにふける私。すると上司(34)が歩いてくる。私のすぐそばまで上司(34)はやってきて、何も言わずに立ち止まるのだった。私は黙ったまま芝生の向こうを見つめている。
「おはよう」上司(34)はおもむろに芝生の向こうを向いたままそう言う。
「沢村さん(仮名)。どうしてここに?」と私が尋ねる。
「なんとなく、ね…」
やがて上司(34)は芝生の向こうを向いたまま私のほうへ右手を弱々しく差し出す。その手にはプリキュアドール美墨なぎさが握られていた。
「これ… ドコイコの…」
「え…」
ドコイコプリキュアドール美墨なぎさでしょ…?」
私は一瞬何がおきたのかわからない。そしてその意味がわかると、自然と瞳に光が戻り笑顔で上司(34)を見上げるのであった。
「あの…」
「いこっ。じょうしかっこさんじゅうよんかっことじ!」私は勢い良く上司(34)の手を取る。
「うんっ」上司(34)の顔は見たことも無いほど澄み切った笑顔となり、我々はお互いの瞳の中にお互いが映るのをしっかりと感じる。
そして私と上司(34)は手をつなぎ駆け足で職場の部屋へと走ってゆくのであった。春の朝は雲ひとつ無く柔らかだった…

上司(34)が私にプリキュアドール(特にキュアホワイト)を買ってきてくれというので仕方なく買い出しに行こうかと思っていたのだが、もう絶対に買うものか。