2 「あのお方」の行方

ということで闇の人々について考えているこの論考では、つづけて「あのお方」が今後どうなるのかを予測してみたい。「あのお方」と九条ひかりシャイニールミナスは対応している。ということはこのふたりを後見している闇の戦士たちとプリキュアたちも対応している。「あのお方」と九条ひかりは育てられるべき子供であり、闇の戦士たちとプリキュアたちは育てるべき親ということになる。マックスハートでの対立軸のひとつは、子育て観の対立である。

自立させること:光の側が達成すべき課題

MH第38話で描かれたように、プリキュアたちが向かっているのは自立した人間になることである。人として自立することで、はじめて本当に他者との素晴らしい関係を築くことが出来る… というのが「ふたりはプリキュア」で伝えられようとしているメッセージだろう。だから光の側の子育て観は「我が子を自立させること」だと考えてよいだろう。
なぎさとほのか(と育ての親としてのあかねさん)は自覚的に九条ひかりを育てているわけではない。しかし九条ひかりを過保護にただ守っているわけではなく、でも見放すわけでもない。九条ひかりはだいたい自分で考えざるを得ない状況に置かれており、なぎさとほのかとは別のところで母(あかねさん)を見つけ、友(奈緒美羽)を見つけ、子(ポルンとルルン)を育てている。ということで、九条ひかりシャイニールミナスは総合的に見れば自立に向かっている。ハーティエルも着実に揃っていることだし。

光と闇、ほんとうの対応関係

光の裏側として闇があり、闇の表側として光があるというのがプリキュア世界の基本構図だ。クイーンとジャアクキング様、プリキュアチームと闇の戦士たちが対応している。そして九条ひかりシャイニールミナスとあのお方である。
あのお方については今なお描写が少なすぎて良く分からない(今週は「僕はどこで生まれたの? 僕は一体…」と目覚めへと一歩近づいたようだが)。しかしあのお方と対を成す九条ひかりシャイニールミナスについては結構分かっている。よって九条ひかりシャイニールミナスについて考えて、それを裏返せばあのお方について分かるはずだ。
ということで光の側は自立に向かってそれぞれが進んでいるのだった。そして九条ひかりシャイニールミナスも何だかんだとはいえだんだんと自立してきている。では自立することの裏返しとは何か。自立しないことである。そのまんま…
僕はこれまで光の側のクイーンの心及びハーティエルに当たる存在が闇の側に見当たらないことが不思議だった。

という感じで、なんでかなーと思っていた。目に見えるモノに注目すると上記のように、光と闇との対応関係が成り立たないことは確かだと思う。しかし実は光と闇との対応関係は「自立すること−自立しないこと」もしくは「自立させること−自立させないこと」だと見れば様相が異なってくる。
「心」は、光の側の価値である。だからジャアクキング様に心が無いのは、それはそれで対応関係になっている。
続いてハーティエルについて。九条ひかりが一人前に成長してゆくにつれ、ひとりずつハーティエルが集まってくる。順序を問えば卵が先か鶏が先かという話になるが、どちらにせよ九条ひかりの成長とハーティエルの集合は不可分である。
だからもし闇のハーティエルがいたとすると、それがだんだんと集まってくるということはすなわちあのお方が成長してしまうということだ。どんな風に成長するかはともかく、とにかく成長してしまう。しかし実際には、闇のハーティエルたちは存在しない。ということは、あのお方は自立しないし成長しないということだ。
(明日に続く)