2 成長するふたり

咲舞は成長しない。彼女たちはすでに与えられている。すでに与えられているものに気が付く。それが彼女たちの「成長」と言えばそうかもしれない。それはなぎほのが見せた成長とは異なる。なぎほのの成長は、ゼロからの獲得だった。というか視聴者にはゼロからの獲得に見えるような構成と演出が成されていた。しかしS☆Sにおいて、僕には咲舞がすでに与えられているものが見える。見るようにあらかじめ組み立てられているのだと思う。
S☆Sにおいて、成長するのは満薫なのだろう。満薫には何も与えられていない。彼女たちに唯一与えられているのは、アクダイカーン様への忠誠だけだった。しかしそれもS☆S第18話を経て絶対ではなくなった(という描写が行われることで、満薫の言葉とは裏腹に視聴者にはそう見えるようになった)。たとえば特売の休憩時間で満が咲に語りかけるとき、OPのピアノ演奏がBGMとして使われていた。これはのちに満薫がプリキュアを助ける場面で回想シーンとなるために必要な演出である。だがそれはそのシーンになってわかることだ。休憩時間シーンの最中において、あのBGMはドラクエのレベルアップBGMのような役目を果たしている。満薫が何かを獲得したことを視聴者に知らせる働きをしている。
彼女たちには感情が無い。社交性が無い。思いやりが無い。やさしさが無い。常識が無い。情熱が無い。夢が無い。友達が無い。家族が無い。満薫にはアクダイカーン様への忠誠しかない。それが無ければ自尊心が高く無目的で独善的で無礼で冷笑的な、要するに世間知らずのませガキだ。そんな満薫がひとつひとつ与えられ、人として成長してゆく。僕にとってそれはなぎさとほのかを彷彿とさせる。